挿絵先行型小説・写真で一席② 『スズメになっちゃった』

f:id:mochiyuba:20160402213036j:plain

 

大変なことになってしまった。

目が覚めると、僕はスズメになっていた。

春の日差しが心地よく、ついベンチでうたた寝をしてしまったのは僕の過失だ。それは間違いない。

スズメを追いかけ回して怖がらせたことはある。知らぬうちにスズメから恨まれていてもおかしはくない。そう生き方をしてきた自負はある。

しかしだからと言って、スズメになることがあるだろうか。

嘆いていてもしかたない。

ひとまずここから移動しよう。移動したところで解決するような問題でもない気はするけれど、いてもたってもいられまい。

もがくように羽を上下させてみると、案外たやすく飛行することができた。

目に映るのは青と白のみ。見下ろせばぼんやり街が見える。空気もだいぶ澄んでいる。

ああ、空を飛ぶとはなんとも不思議な気分である。

気分がいいので、いつもの散歩コースを上空から観察してみよう。

この公園、こんな形をしていたのか。あんなところに気持ちの良さそうな芝生があるなんて知らなかった。あそこでする昼寝は、さぞかし夢見がいいだろう。

おや、友人がいるではないか。

おーい、と言っても彼からしたらスズメがさえずっているようにしか聞こえないか。

よく見れば、後頭部に円形のハゲができているな。彼も苦労しているのだな。今度うまい魚でも食わしてやろう。

おっと、あまりいい思い出のない場所に来てしまった。

この魚屋、店主がどうにも怒りっぽくていけない。

少し商品に触れただけで、カンカンに怒るのだ。

頭にフンでも落としてやろうと思ったが、やめた。催していないものはしかたない。

さて、長時間飛んでいたために少々疲れてしまった。

そこの木の枝で休もう。

そうして僕は、目を閉じた。

 

目を覚ますと、元の姿に戻っていた。

なかなかいい経験だった、スズメもいいものだ、なんて言っている場合ではない。

調子に乗って高い木を選んだのが間違いだった。

どうしよう、降りられない。

僕は必死に声をあげた。すると気づいた人間の2人組が、笑いながら僕に指をさす。

「あっ、あそこ。猫が助け求めてるよ」

「本当だ。なんで猫って降りられないのに木に登るんだろうねえ」

「ホントホント。おかしいよねー」

笑っていないで助けてくれまいか。

今度うまい魚を食わせてやるから。

 

<完>